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よくある質問

オーステナイト系ステンレス鋼は磁性が無いと聞いていましたが、磁性が帯びている場合があります。なぜでしょうか?

表1に示すように、オーステナイト系ステンレス鋼の中にはミガキ、研磨や曲げなどの冷間加工をしただけで磁性を帯びる鋼種や、冷間加工しても磁性が帯びない鋼種があります。
これは、研磨などで外的圧力が加わった部分がマルテンサイト相に変化したためで、この部分は、磁石が付くようになったり、硬さが高くなる(加工硬化)などの変化があります。
このような現象で耐食性が大幅に劣化するとは考え難いのですが、精密電子部品や分析機器内部品などでは、磁性除去、経年変化防止のために、固溶化熱処理をする事例があります。

・磁性有り、加工硬化無し ⇒ 脱磁機にて磁気取りのみ
(錆が発生している場合は、部分的に不動態化処理)

・磁性有り、加工硬化有り ⇒ 固溶化熱処理実施

表1.オーステナイト系ステンレス鋼の代表的な鋼種と磁性について
鋼種 主な化学成分 磁性の有無
Cr Ni C
SUS301 17% 7% 0.15% 焼きなましの状態で非磁性、冷間加工で磁化
SUS303 17% 8% 0.15%
SUS304 18% 8% 0.15%
SUS305 18% 13% 0.12% 冷間加工をしても非磁性
SUS310S 25% 20% 0.08%

pdf参考資料 ->> SUS系図表

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析出硬化型ステンレス鋼、SUS630とSUS631はどういう特長がありますか?また、熱処理の違いを教えて下さい。

JISには次のように化学成分が明記されています。

SUS630 マルテンサイト系析出硬化ステンレス鋼 (17Cr-4Ni-4Cu-Nb)
SUS631 セミオーステナイト系ステンレス鋼 (17Cr-7Ni-Al)

SUS630は、固溶化熱処理によってマルテンサイト中にCuを固溶(溶け込ませ)させて、次の時効処理でCuを析出させることで硬化します。 時効処理の温度しだいで硬さや機械的性質が変わるため、熱処理条件決定は細心の注意が必要です。【参考:表2】

SUS631は固溶化熱処理状態では軟らかく、準安定オーステナイト組織となるため、容易に加工ができます。 しかし、加工ができる反面、それを硬化させる中間硬化処理が必要です。
加工後に中間熱処理によって、不安定なオーステナイトをマルテンサイトにして、その後の時効処理で、Ni、Alの金属間化合物を析出させることで硬化します。

表2.析出硬化型ステンレス鋼の熱処理
  熱処理 記号 熱処理条件
SUS630
(17-4PH)
固溶化熱処理 S 1020℃〜1060℃ 急冷

Ms点は約121℃でMf点は32℃で、1060℃以上に加熱すると、フェライトが多くなり、Ms点が下って残留オーステナイト量が増えるので、硬さは低くなる。

析出硬化熱処理 H900 S処理後 470℃〜490℃ 空冷
H1025 S処理後 540℃〜560℃ 空冷
H1075 S処理後 570℃〜590℃ 空冷
H1150 S処理後 610℃〜630℃ 空冷
SUS631
(17-7PH)
固溶化熱処理 S 1000℃〜1100℃ 急冷
析出硬化熱処理 H1050 (マルテンサイト化処理)S処理後に760±15℃で90分保持

760℃に加熱すると、γから炭化物が析出して、γが不安定になってMs点が上昇し、その後冷却するとマルテンサイトになる

⇒ 1時間以内に15℃以下まで冷却し30分保持
(析出硬化処理)⇒ 565±10℃に90分保持後空冷

析出硬化後の硬度(Hv)は ≧350

RH950 (マルテンサイト化処理)S処理後に955±10℃で10分保持

970℃以上に加熱すると、γが安定化するため、Ms点が下がり、SZの効き目が減少する

⇒ 室温まで空冷 ⇒ 24時間以内に(SZ)-73℃±6に8時間保持
(析出硬化処理)⇒ 510±10℃に60分保持後空冷

析出硬化後の硬度(Hv)は ≧400

冷間圧延材(熱処理無し) CH900 (析出硬化処理)⇒ 475±10℃に60分保持後空冷

析出硬化後の硬度(Hv)は
1/2H材≧380
3/4H材≧440
H材≧500
EH材≧550

pdf参考資料 ->> SUS系図表

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